突然ですが、建物を運営していくのにどのくらいの人が関わっていると思いますか?
例えば、街中の高層テナントビルでも良いですし、マリンメッセの様な大きなイベント会場でも良いです。中枢病院の様な大きな病院でも良いですし、ブティックの様な素敵なお店でも良いです。
建物を所有する人は当然いますよね。あとは建物を管理する人?テナントやイベントを誘致してくる人?くらいかな?
今日はこのあたりのことをビルマネジメントの視点で紹介したいと思います。
こんな人におすすめ
・ビル管理の業界で働いているけど、ビル管理の全体像がよく分からない人
・ビル管理業界の新人さん
・ビル管理のことに興味がある人
・ビル管理=ビルメンと思っている人
建物の管理構造
基本的なビル管理の体系
建物を取り巻く環境は日々変化しています。
今までも変わってきました。そして、これからもずっと変わっていくでしょう。
いまの時代の建物は、どのように管理されているのでしょうか。
ビルマネジメントを取り巻く各ステークホルダー(関係各社)の全体を見ていきましょう。
※分かりやすくするために簡潔に書いていきます。
・思ったより多くの人や会社が関わっている
・複雑化している管理構造
先に建物管理に携わっている人達を図で見ていきましょう。
現在の主流はこんな構図です。
実は色々な立場の人が連携を取りながら建物を管理しています。ここでは以下簡単に紹介しておきます。
文字通りその建物を所有している人の事です。この所有者というのは、人や企業(法人)です。
みなさんの感覚で言うと銀行と同義で良いです。実際に信託銀行が行っている事もありますので。
「AM(エーエム)」や「アセット」と略されて言われる事が多いです。Asset(アセット)とは英語で「資産」という意味です。
所有者の代わりに所有者の金融資産や不動産等の資産を総合的に管理する事を専門にしています。
所有者の代わりに、建物を実際に運営しているところになります。
テナントの誘致や退去、維持費等の建物の収益を管理しています。
会社で例えるなら、所有者やAM(アセットマネジメント)は株主、PM(プロパティマネジメント)は社長(経営者)と考えると分かり易いです。
先ほどのPMが建物を運営する役割であるのに対し、BMはその運営のために実際に動いているところになります。ここでは、設備管理員や清掃員や警備員等を直接雇用して建物の管理に必要な人材を配置しています。
こちらもBM同様、建物を運営するために実際に動いているところになります。
作業員や工事監理員や職人を配置して、建物の管理に必要な作業をしています。
BMは管理に必要な人材を配置。協力業者は作業に必要な人材を配置。
このイメージを持つと分かり易いでしょう。
PMやBMの積算金額や工程等が妥当か検証し所有者等へ助言する人(企業)
元々は建物を建てる時等で主に採用されていた手法であるが、近年建物管理の現場でも少しずつ見られる様になってきているポジションです。
このCMは少し特殊なポジションで、直接的に所有や経営をしているという訳ではなく、PMやBM等の経営に関する助言役という立ち位置です。
みなさんの感覚で言うと、病院のセカンドオピニオンの感覚に近い感じでしょうか。かかりつけの病院があって診断や治療が正しいか不安なので、2つ目の病院でも診断をもらう。そして2つ目の病院でも同じ診断が出て初めてホッと安心する。この2つ目の病院に当たるのがCMと覚えておきましょう。
また、今回は入れていませんが、FM(ファシリティーマネジメント)と言われる名称もあります。
立ち位置的にはPMと同じと考えて良いです。PMがオールマイティなのに対し、FMは設備に特化しているところが多いです。
ファシリティーとは「施設」「設備」等を表す言葉です。
プロパティとは「財産」「物件」「不動産」等を表す言葉です。
この意味の違いからも何となく想像できると思います。ここでは「違うんだ」くらいの認識で大丈夫です。
建物管理の実際
全ての建物で、さきほどの管理体制かというとそうではありません。建物の大きさや使い方によってその建物に携わる人や会社が変わります。
1つの会社がPM業務とBM業務を行う事もありますし、所有者とBMが直接契約を結ぶ事もあります。また、規模が大きくなるとBMだけで何社も入っているなんて事もあります。
必ずこうでなければならないという正解はなく、あくまで建物ごとに最適な管理ができていれば良いのです。
なぜこの様に関係する会社が多くあるのか
この理由は以下の様に考えています。
・不動産の価値の変遷
・建物の大規模化
・コンプライアンスの多様性と厳罰化
ここも一つずつ見ていきます。
不動産は売買するものという考え方が浸透し流動資産として扱われる様になり、所有と経営の分離が進んでいます。所有者が変わるたびに経営も変わり、毎回運営の仕方が変わってしまったら入居テナントも困ってしまいます。そのため、いままで1つであったものも、所有者側と経営者側とに細分化されている現状があります。所有者は変わるが経営者は変わらない状態にして資産価値の維持向上を図っているのです。こうして関係会社が増えています。
建物が大規模になると仕事量が多くなるため1人(1社)では管理できなくなります。金銭的には先ほどの所有と経営の分離という事になりますが、実際に作業や調査等で動く場合も、規模が大きくなると純粋により多くの人の協力が必要になります。結果、関係する会社が増えてしまうのです。
コンプライアンスとは法令を守る(法令遵守)ことです。
最近はコンプライアンスが厳しく叫ばれる時代になっていますので、1つの法令違反が時として建物の価値に大きな損害を与えてしまいます。しかも、守らなければならない法律も時代と共に多くなっているのです。所有者側としては法令違反は非常に注意したいリスクになります。ですが全てを把握することは難しいです。その法令違反を防ぐには、その道のプロに頼むのが最善ということになります。
それぞれのプロに頼んでいたら結局これだけ多くの関係者になった、という考え方の方が良いかもしれません。
建物でよく見る作業服を着た人って誰?
みなさんが建物で普段見かける作業服を着た人や警備服を着た人、そして清掃している人は基本的にBM(ビルマネジメント)の会社の人です。今まで紹介してきたBM以外の人はあまり表立って人前には出てきません。
そして、その普段見かける「作業服を着た人」というのが皆さんがよくインターネットで見かける「ビルメン」です。(正式にはビルメンテナンス)
さいごに
普段利用している建物には非常に多くの人や会社が関わっています。そのすべての会社や人の思いは一つです。
「建物を安全・安心・快適に利用してもらう」
どの建物であってもこれは変わりません。もちろん様々な利害関係や金銭が関わってきますので常にこの方向というわけではないです。ただ、みんなこの気持ちは持っているんだというのは心にとめておいて頂きたいです。
建物を利用したときには、ぜひいままで紹介した「たくさんの縁の下の力持ち」を思い浮かべて利用して頂けると幸いです。